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「女性活躍」とは社員一人一人の自律から。ボトムアップで変化を起こし、制度改正と継続的な課題解決の体制を実現

Writing
Azusa Okajima
Photo
Sayaka Mochizuki
「女性活躍」とは社員一人一人の自律から。ボトムアップで変化を起こし、制度改正と継続的な課題解決の体制を実現

オムロン フィールドエンジニアリング株式会社
(右)榎並 顕さん   執行役員 エネルギーマネジメント事業本部 本部長
(中)村田 めぐみさん 企画本部 経営企画部
(左)中田 大輔さん  エネルギーマネジメント事業本部 アセットマネジメント部

オムロン フィールドエンジニアリング株式会社(以下、OFE)は1970年設立。エンジニアリングサービス、オンサイトサービス、運用管理サービスを提供し、脱炭素や品質改善、省力化、顧客満足度の向上など様々な課題解決に取り組む。
従業員数は1,454名(2024年4月1日時点)。日本全国に140カ所の拠点を展開し、顧客のニーズに迅速に対応する体制を整えている。https://socialsolution.omron.com/field-engineering/

●課題――「女性活躍」を妨げる無意識の思い込みや好意的差別、社員の活躍を阻害する制度が存在していること

――meguriがサポートしたのは「女性活躍プロジェクト」でしたが、どのような理想を実現したいと思われていたのでしょうか。

榎並:OFEは、会社の名前の通りエンジニアリングの会社で、技術者を中心とした男性社員が9割を占め女性は約1割しかいません。男性かつ技術者がマジョリティである社内の「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み、偏見)」を外し、OFEの経営チームが「女性活躍」に関して同じ課題認識を持ち、女性社員がキャリアを重ねる上での障壁を取り払うことで、中長期的に、女性管理職比率を高めていきたいと思いました。

これの問題意識は、2023年に社長に就任された立石社長が感じた課題感に端を発します。社長が各拠点を回っていたところ、能力の高い女性社員に数多く出会ったにも関わらず、女性管理職の割合は非常に低く、当然ながら経営チームには、女性社員が1人もいない。「OFEは、意欲的な人財を活かせていないのでは」という懸念があったのです。

私は出向でOFEに来ていますが、客観的に見てもOFE社員は総じて優しく、男性社員は女性社員を差別したり、女性の活躍を阻害したいと思っているわけではありません。ただ、女性社員の苦労や、経営陣に女性がいないことを事実として認識しながら、その状態を引き起こしている問題の真因が何なのかがわかっていない感じがしました。

女性社員も「自分たちが経営に関わって当たり前」という意識が薄かったり、積極的に現状を変えようとはしていない、もしくは「声を上げても無駄」と諦めているような印象を受けました。

村田:榎並さんのおっしゃる通り、プロジェクトに入るまで、現状を変えるべきという意識を私自身持っていませんでした。新卒からOFEで働き、外部とのかかわりも少なかったので、経営層に女性がいなくても疑問を持っていませんでしたね。

――プロジェクトにmeguriをアサインした理由をおしえてください。

榎並:アンコンシャスバイアスを外すためには、OFEだけに閉じて解決するのではなく、外部コンサルの客観的な意見や認識が必要だと感じたからです。 
中でもmeguriを選定した理由は3つあります。1つ目は、meguriとオムロンの価値観が近しいと感じていたことです。オムロンは、創業者立石一真が提唱した未来予測理論「SINIC(サイニック)理論」を経営の羅針盤としています。SINIC理論によると2025年からは「自律社会」へ移行すると予測しています。meguriも、何より「自律」を大切にされており、そこに親和性を感じていました。

2つ目は、以前から深いお付き合いがある自然電力株式会社の経営陣が、meguriのコンサルティングに対して高い評価をしていたことです。彼らの高い評価を聞いて、meguriと仕事をしてみたいと感じました。3つ目は、スタッフそれぞれが自律し、プロフェッショナルであること、そして今回でいくと女性活躍をアカデミックに研究されているスタッフのアサインを提案してくれたこともあります。

●改善に向けたステップ ――ヒアリング・WSの実施と熱量高めの伴走

――実際のプロジェクト進行と、その中でのmeguriの役割を教えてください

村田:まず、OFE側は榎並さんと私、井上さんの3名でプロジェクトが始まりました。プロジェクトが始まった2023年11月から約1か月半の間は、各事業部の実態についてヒアリングをしました。全国に拠点があるので、バランスを見ながら女性社員・男性社員、一般職から管理職まで43名の社員に話を訊きました。

実は、今プロジェクトチームに入ってくれている中田さんと人事の村川さんは、ヒアリング対象者だったんです。中田さんは労使協調組織「むつみ会」のトップとして現場の声をキャッチできる立場というだけでなく、ヒアリング当日に「みんなが腹落ちできる課題を見いだせなかったから」と、再度ヒアリングメンバーに声をかけて議論を深め、主催のわたしたちに議論の過程を報告してくれたのは印象的でした。

榎並:いろいろな立場から女性活躍について考えてほしかったし、こんな風に自ら動ける人は、すぐプロジェクトに入れよう。と。

中田:いつのまにか、プロジェクトメンバーに加わっていました(笑)。

村田:meguriさんには、ヒアリング対象者の選定サポート、事前アンケートの内容を基にしたヒアリングの実施、ヒアリングの文字起こし、匿名性を担保した上でサマリー化・課題の構造化を担っていただきました。

榎並:正しい打ち手は、徹底的にファクト(実情)を洗い出すことでしか見つかりません。村田さんは、短期間でのヒアリングのセットに注力し、変革のベースをmeguriと一緒につくってくれました。ヒアリングで見えてきた女性活躍に関する課題は、なんと395個。途方もない数ですが、meguriサポートのもと、経営層向けのワークショップを実施し、課題の共有と、女性をとりまく社会環境の現在位置についてのインプットを行いました。今すぐ解決すべき課題については、先行して取り組むことも決めました。

ワークショップで印象に残っていることとして、男性社員が陥りがちな「好意的差別」についてです。例えば、ミーティングを17時に設定し、「議事録は取っておくから、保育園のお迎えに行ってあげて」というのは、女性社員を気遣っているようで本人が望んでいるかの対話ができていませんしそもそもミーティングは全員が参加できる時間に設定すべきといった好意的差別についての話は、経営層にもリアルに響いたのではないかと思います。

村田:ヒアリングを進める中で、管理職と一般職との間の課題も見えてきました。管理職の仕事の一つは、一般職のメンバーのwillを引き出すことや、willの達成をするために導くことですが、そのためには継続的にキャリアについて話せる場が必要です。
その場の設定とスキルを高めることを目的に、女性の管理職候補とその上司との1on1対話研修を実施。1on1における対話研修をmeguriの研修パートナーである株式会社Coreleadの有冬典子さんに実施いただき、その後、女性の管理職候補とその上司の1on1にmeguriのコンサルタントの皆様に伴走いただきました。

3月には全部署の本部長クラスが参加する第2回のワークショップを開催。ヒアリングで出てきたファクトを基に、各部署で目指す「女性活躍コンセプト」を設定。事業部ごとの事業計画に反映させました。
これをこれからOFEとしてまとめ、OFEの女性活躍とはを打ち出していきます。

――実際、meguriと協働する中で何か感じたことはありますか?

榎並:meguriのコンサルは、こちらの本気度を試されているというか、常にど真剣です。「ここで変化を起こせなかったら、コンサル頼んだ意味ないよ。わたしたちに払う費用の元取れないよ!」とストレートに言われて、提供価値に対する責任感の強さというか、プロジェクトに全力で向き合ってくれていることを実感しました。

中田:私も含め、社員の多くは「女性活躍」というテーマについて考えたことも、話したこともないあまりないと思います。しかし、meguriさんから「女性を議論の場に入ると、新しい視点が加わり、導かれる結論が変化する。会社の成長のためにも『女性活躍』は必要」という言葉を頂いてから、やらなくてはと気づいた気がします。

村田: たしかに、OFEは良くも悪くも自分の領域内できっちり働くという社風なので、プロジェクトメンバーの井上さんと最初は戸惑いました(笑)。でも、「女性が社会で活躍するって、こういうことなのかな」という、ひとつのモデルを間近で見せてもらえた感覚もありました。

●コンサルを入れた効果――社員の活躍を支える制度変革やD&Iの推進、自ら動き出せる行動力がついた

――meguriのコンサルティングを通して実現したことを教えてください。

榎並:meguriの後押しもあり、女性だけでなく男性を含めた社員全体の活躍を阻害する昇級・昇格制度を短期間で変えることができました。外部からの客観性ある意見と、現場ヒアリングによる生々しい声がかみ合った成果だと思います。

中田:昇級・昇格制度については「むつみ会」でも変えたいという声が上がっていたものです。しかし、実現できなかった経緯があり、長年の課題となっていました。今回、変更が実現したことは職場訪問で出会う社員からも高く評価され、「自分たちが声を上げて動けば、会社をより良く変えられるんだ」という自信につながればと思いました。

榎並:社員が変化を実感してくれたことは大きな変化だと思います。加えて経営層が組織の多様性を涵養することは経営の重要事項であるというマインドセットをリアルに醸成できたこと、踏まえ具体的に女性活躍に向けて解決すべき課題の解決の取り組みを具体的に検討できたことは今後にとって大きな成果です。トップダウンとボトムアップの動きが上手く循環し始めた実感があります。

――meguriのサポート後、社内に生まれた変化はありますか?

村田:ヒアリングに協力してくれた社員の意見が経営方針に反映され、これも「女性活躍」だと実感できることが何度もありました。経営企画部のメンバーも、課題感を共有できたことで打ち手を考えてくれるようになったので、これからも、周囲の共感や協力を得ながら取り組みを推進していきたいと思います。女性・男性関係なく、みんなが活躍できるよう、社員自身の「こうしたい」を口に出せて、それを上司や周囲がサポートできる環境をつくりたいです。

中田:meguriさんが社員一人ひとりの声を引き出してくださったことで、やっと「女性活躍」について考え、話し合えるスタートラインに立てた感覚があります。

村田:私は、自分も大きく変化したと感じます。これまで当たり前に受け止めてきたことを「本当にそうか」と省みたり、自分のキャリアを真面目に考えたいと思ったり、ワークショップ後に思ったほど変化が見られずもやもやしたり……近くにありながら気付かなかった課題を「自分事」に感じられるようになりました。制度の話で中田さんも仰っていましたが、行動しなければ何も変わらないと気付かされたのも、大きな変化です。

――最後に、プロジェクトの今後の展望についてお聞かせください。

榎並:「女性活躍プロジェクト」はこれから本格的な取り組みがスタートします。女性活躍と言っていますが、本質的には男性含めた全社員の働き方・意識・制度の改革を進めていくこととなります。
女性活躍プロジェクトを具体的に取り組む中で参画したメンバーがどんどん変容していきました。その変容がきっかけとなり、さらに上位階層にあたるDEI&Bの定義をOFEらしく定め、打ち出すことになりました。

障がい者雇用、キャリア人財の活躍などそれぞれの取り組みにはまだ濃淡ありますが、OFEらしい取り組みを定め進めていくことを楽しみにしています。取り組みの中では、OFEの社員が自らの意思で変革を進めていく、そしてOFEもその変革をサポートする、そのような関係を築くことで組織風土の改革も進むと思っています。数年後には、社内のそれぞれのチームが最高の成果をあげることができるようになるよう、引き続き取り組みを進めていきたいと思います。