Journal

教育体系の構築からマインド改革まで。経営が信頼を寄せる、現場の「当事者意識」を呼び覚ますPM/PMO伴走支援とは?

Writing
Emiko Hida
Photo
Emiko Hida
教育体系の構築からマインド改革まで。経営が信頼を寄せる、現場の「当事者意識」を呼び覚ますPM/PMO伴走支援とは?

株式会社meguriは、2025年4月から10月にかけてオムロン フィールドエンジニアリング北海道株式会社の教育体系構築プロジェクトに伴走しました。ご依頼いただいた背景や成果について、代表取締役専務でプロジェクトリーダーの鈴木基司さん、部長の塩田達也さんと平子克成さん、本プロジェクトにおいてPMを担当した課長の大柳陽一さん、PMOを担当した漆崎夏美さんにお話を伺いました。

オムロンフィールドエンジニアリング北海道株式会社
オムロングループを筆頭に様々なメーカーの保守サービスとエンジニアリングを担う会社。駅の自動改札機や銀行のATM、交通信号機といった社会インフラから、工場や店舗の自動化・検査システム、太陽光発電・蓄電システムまで、多岐にわたる機器・システムの設計、構築、保守メンテナンスを全国で展開。「北海道に欠かせない企業」をビジョンに掲げ、24時間365日のオンサイトサービスで社会システムの維持を通じて社会貢献を行っている。

PM/PMOの役割・あり方に対する認識が変わった

――ご依頼いただいた背景には、どんな課題があったのですか?

鈴木:OFE北海道を今後さらに成長させていくために、組織風土の変革が必要だと考えていました。OFE北海道では壊れた機械や設備をすぐに直すといった突発的な仕事が多いので、瞬発なフットワークはものすごく持っています。その分、中長期的なプロジェクトを一歩一歩進めていくのがやや苦手で、納期ギリギリに全力を出して間に合わせる傾向があったのです。

でも、もっと前段階から取り組んで改善を繰り返せば、アウトプットはより良いものになるはず。仕事の進め方やプロセスをがらりと変えるために、meguriさんに協力を仰ぎました。

――なぜmeguriを選んでくださったのですか?

鈴木:1年半ほど前、OFEグループの人事戦略を策定する際に、meguriさんにPMOを務めていただきました。そのやり方が自分たちのやり方とまったく違っていて、すごく刺激を受けたんです。

僕たちはそれまでPMのことを「アクションを決めてメンバーに指示する人」、PMOのことを「会議室を押さえたり書類を印刷準備をするアシスタント」と捉えていました。でも、meguriさんに入っていただいたことで、PMは「メンバーの意見を吸い上げながら方向性を固めていく人」、PMOは「進捗を管理するため、必要な働きかけを行う人」なのだと認識が変わりました。PMOが抜け漏れを確認して次にやるべきことをPMに働きかけるから、最初に決めた通りに物事が進み成果が出る。僕にとってもそれは大きな成功体験で、「OFE北海道にもこれが必要だ」と感じました。

左から大柳さん、漆崎さん、鈴木さん、平子さん、塩田さん

上司の中の正解を探るのではなく、自分で考えて提案するようになった

――改めて、今回のプロジェクトの概要を教えてください。

大柳:主目的は、社員の新しいロードマップとなる教育体系を作成すること。第二の目的は、

プロジェクトを通してPM・PMOのスキルを高めることでした。フェーズ1では、①目的・ゴールをすり合わせる、②成果物(教育体系)のイメージを共有する、③理想の人財を定義する、④教育体系を作成する、⑤レビューを行う、というプロセスで進めました。現在は作成した教育体系を実際に運用していくフェーズ2に移りはじめたところです。

――PM・PMOを担当した大柳さんと漆崎さんは、先ほど鈴木さんがおっしゃっていた課題感をどれくらい共有されていましたか?

大柳:最初はあまりピンときていませんでした。人財育成が大事なことはもちろんわかっていましたが、すごく関心があったわけではなくて。自分の成長にもつながるだろうと軽い気持ちで参加して、始まってから「まずい、想像よりも高いレベルのものを求められているぞ」と……正直、後ろ向きな気持ちになったときもありました。

でも、megurさんとやりとりするなかで「これは大事なことだな」と思ったし、知識を得ると同時に体現していく方法が一番自分の力になると考えたんです。それで、精一杯頑張ってみようと奮起しました。

漆崎:私も最初は「何か始まるんだな」程度に感じていました。だから、物事が動いていない時期も「なんで止まっているんだろう」と待ちの姿勢でいたんです。でも、プロジェクトになんとか食らいついていく中で、「組織も自分も変えないといけないんだな、そのことに気づかせようとしてくれているんだな」とわかって、日々の仕事に対する意識も姿勢も変わりました。

――ご自身の変化について、もう少し教えてください。

大柳:PMとして、上長も含めてメンバーの意見を聞き取ってイメージしているものを把握し、ほかのメンバーにもわかるように伝える。必要に応じて個別にすり合わせを行い、合意形成を図る。こうした経験を通して、まったく知識がなかった状態から、PMに必要な姿勢やスキルを学び取ることができたと思っています。今回得られたものを別の機会にも展開したり、ほかのメンバーにも広めたりしていくと、OFE北海道は良くなっていくと感じています。

漆崎:これまでは「多少納期ギリギリになっても仕方ない」「納期が近づいているからこれくらいでも仕方ない」という気持ちがありましたが、「最初に合意した通りに物事を進め、きちんと成果を出す」ように意識が変わりました。PMOとしては、会議の前にアジェンダを共有し、会議の場で「いつまでに誰が何をやるのか」というネクストアクションを明確にすることの重要性を理解して、積極的に動くようになりました。

――上司の立場から見て、大柳さん・漆崎さんはどう変わったと思いますか?

平子:以前は上司の中に正解を探したり、簡単に答えをほしがったりしていたけど、一度自分で考えて、自分なりの答えを持ってから質問してくれるようになりましたね。その過程で、これまで蓋をしていた「らしさ」も現れはじめて、「ああ、これが本当の大柳だよね、漆崎だよね」と頼もしく思っています。

塩田:質問の仕方も、「どうしたらいいですか」という感じだったのが、「自分はこう考えたのですが、もっとブラッシュアップしたいのでご意見お願いします」と大きく変わって、自分たちでしっかりと考えて物事を進めてくれるようになりました。

漆崎:これまでは「上から落ちてきた指示に従う」という意識が強くて、物事を決めるのは上司だと思っていたんです。でも、平子さんは私が自分で考えて提案することを待っていてくれていたんですよね。「自分ごと化して考えて意見を表出するのが最低ラインのことなんだ」と気づいて、意識するようになりました。それが平子さんのいう「らしさ」につながっているのかもしれません。

部下に対して、「自分で気づかせる」ことを意識した働きかけをするように

――平子さん、塩田さんに変化はありましたか?

塩田:部下に対して伝えるべきことを伝えられていなかったし、考えさせることをしてこなかったと反省しました。問いかけや質問をしているつもりだったけど、足りていなかったんですね。松本さん(meguri代表)が2人に踏み込んで対話をすることで、大柳、漆崎に気づかせていくので「上司としてこういう関わり方をするべきなんだ」と実感しました。

大柳:確かに、塩田さんは最近、「自分で気づかせる」ことを意識した働きかけをみんなにしてくれているなと感じています。

漆崎:平子さんは、こちらが行ったことに対して、「あれがよかった」「こういうところがいい」といったフィードバックをくださることが増えました。また、「ここはもっとこうした方がいい」というときに、実践して見せてくれているんだな、と感じます。

平子:そうですね。最後のアウトプットだけ受け取るのではなく、途中経過を意識して確認するようにしました。

塩田:「それじゃうまくいかないな」と予想できても一旦我慢して見守ったり、物事が進んでいなくて報告を逃げようとしているところをこちらから捕まえたり。どう介入するか、どこで引き取るかのタイミングを意識しています。

――鈴木さんから、4人の変化はどう見えていますか?

鈴木:細かなところはみんなが挙げてくれた通りだけど、表面に表出している部分だけではなく、もっと深層のところが変わった気がします。大柳さんと漆崎さんは、プロジェクトにおける自分の立ち位置を理解して、「これは上司が決めること」ではなく、「自分たちがここまでやる責任がある」といった当事者意識を持つようになりましたね。志というか、ハートの入り方というか、うまく言えないけどそういうところが本当に変化したと思います。

プロジェクトへの関わり方やマインドセットが変わったという点は、平子さんと塩田さんも同じです。この2人は能力が高いから、部下から答えを求められたらすぐに与えられるし、代わりにやってあげられる。でも、自分たちはサポートをする立ち位置なんだと意識が変わって、部下から意見や行動を引き出すようになりました。マインドセットが変わったことで行動が変わり、行動が変わることでマインドセットが変わる。そうしたいい循環が生まれているように見えます。

――個々人だけではなく、関係性も含めて変化が生まれているのですね。

鈴木:実は最初、このプロジェクトには平子さんと塩田さんをあまり関与させたくないと思っていました。いまの若手には成功体験が少ないと認識していたから、「自分たちの取り組みによって会社の仕組みが変わった」という成功体験を味わってほしかったんです。経験を積み重ねて自信をつけるいい機会になれば、と考えていました。

ただ、途中でプロジェクトがうまく進んでいなかったときに、meguriさんから「これは大柳さん、漆崎さんへの日常の支援が必要だから、平子さんと塩田さんを巻き込んだ方がいい」とアドバイスをもらいました。最初は躊躇したけど、今までの自信の経験だけでなく自分以外の意見も取り入れてみようと考えることができました。結果的には全体の意識が変わったので、すごくよかったなと思っています。

――みなさんのマインドセットや行動が変わった一番の要因は何だと思いますか?

鈴木:北海道は外からの刺激が少ないんですよ。グループ内で言えば親会社とのやりとり程度ですが、コミュニケーションもオブラートに包んで優しく伝える傾向があるので、伝える側受け取る側で認識のズレがあったり伝わり切らないこともある。今回、もしグループ内部だけで進めていたら、相当時間がかかっていたんじゃないかな。その点meguriさんはストレートに伝えてくれるから、みんな「変わらないと」と火がついたんだと思います。

大柳:途中、約束した納期を守れなかったことが続いて、meguriさんから「アウトプットして行動に表さなければ、プロジェクトに予算をつけてコンサルティングをつける意味がないです。やる気がないのであればプロジェクト中止にしますか?」と𠮟咤激励されたことがありました。社内では多少遅れても許されるような空気がありましたが、本当はそれじゃダメなんですよね。「何やっているんだろう、申し訳ないな」と落ち込みましたが、それが変わろうとするきっかけにもなりました。

漆崎:私自身これまで、ほかのメンバーから「何々の件で時間ください」と予定を押さえられたけど具体的に何をするのかわかっていなかったり、会議の際に「これはいつまでに誰がやるんだろう?」と疑問に思ったり、少しモヤモヤすることもあったんです。ただ、それを指摘して改善していくような組織風土ではなかったから、「こういうものなのかな」と思っていて。

でも、meguriさんから「事前にアジェンダを共有しておけば会議の場で決めるべきことを決められるし、ネクストアクションも明確にできる。これはほかの組織では普通に行っていることです」とはっきり言われて、北海道内ではそういうふうに指摘されることがなかったので面食らいましたが、「たしかにそうした方がいいな、変えていきたいな」と思いました。

10年後、「2025年が転換点だった」と言われるように

――プロジェクトとして、または個人としての今後の展望を教えてください。

大柳:ようやく教育体系ができて運用していくフェーズに入ったので、ここからが本当のスタートだと捉えています。北海道のメンバーみんなで教育体系を使えるツールにしていきたいですね。個人としては、PMはもちろんPMOとしても自分はまだまだだと認識しているので、自己学習を続けていきたいです。調べたらPMOにまつわる資格試験がいくつかあったので、そういったものも受けてみようかと考えています。

また、今回「人を巻き込む」という点がうまくできなかったと反省しています。人に任せるには、目的やゴールをしっかり伝え、相手がちゃんと理解しているかを把握しながらコミュニケーションを取る必要があります。今後はそうしたところを意識していきたいと思っています。

漆崎:私も、作成した教育体系をどう運用していくか、どんなふうにパッションを入れていくかが大事だと思っています。そこのスピード感が少し遅い気がしていて、ほかのメンバーの認識とのギャップも感じています。そのギャップを埋めながら進めていきたいですね。

個人としては、今回のプロジェクトを通して「知っていると思っていたけれど、いざやろうと思うと全然できない」という体験をしました。学びながら実践して、そのなかでフィードバックをもらって直して、また実践して、ということを繰り返していきたいと思います。

鈴木:僕はずっと「人の成長なしに企業の成長なし」と思ってきたし、教育を大事にしてマネジメントをしてきたつもりです。そして、今後の経営を担う人財を育てていくために、今年は変化が必要な年だと考えていました。今回、みんなの共通言語となる教育体系ができて、プロジェクトメンバーに変化が生まれて、いいスタートを切れたと思っています。

ただ、いくらいいマニュアルやプログラムがあっても、実践しなければ人は成長しません。実践するためには組織風土を変えていく必要があるし、もしかしたら働く環境も変えていく必要があるかもしれない。いろんな世代を巻き込んで、スパイラルアップしていきたいですね。

北海道のメンバーはとても真面目な人が多いし、今回このプロジェクトメンバーが見せてくれた成長を遂げてくれるポテンシャルは間違いなく持っています。10年後に「2025年が転換点だった」と言われるように、今回得たものを社内全体に広めていきたいです。